大谷レイブンさん

起きがけにレイブンさんの訃報を聞く。

今年8月末、藤掛正隆さん(ドラム)と河端一さん(ギター)と僕のトリオ「DANGOM」のライブがアニーズカフェであり、リハの後に会場近くで前打ち上げしていた。その時珍しくレイブンさんの話題になり、藤掛さんが「そうだ、今度レイブンさん呼んでまたやろう」と言った。DANGOMにレイブンさんが加わってもらったら面白そうだし、やろうやろう!となった。それも今思うと不思議だ。 

僕は中学生の頃、レイブンさんがやっていたハードロックバンド「マリノ」が東京に来ると新宿ロフトや東横劇場、今はなきライブイン村さ来(あの居酒屋の村さ来が英国でのパブ(ロック)的な事を居酒屋スタイルでやっていた)、他にも藤沢のBOWあたりまで追っかけて聴きに行っていた。いつもレイブンさんの真ん前、3段積みマーシャルに向かって聴いていた。お客がすし詰め状態だったので押しつぶされかけたこともあった。当時僕より若い人は会場で見なかったし大変な事もあったけれど、レイブンさんのマーシャルから炸裂するギターサウンドにいつも興奮した。その頃、たまたま音楽雑誌の企画でレイブンさんと読者代表という形で対談出来ることになり、ギターを持参して色々質問させてもらったがとても緊張した。ハードロック全盛時で速弾きが流行っていたが僕にレイブンさんは「1小節の中に沢山音を詰めて速弾きするのもいいけれど、たった一音で何小節もまたいで音を伸ばすのは速弾き以上にかっこいい事だよ。速弾きの練習も大事かもしれないけれどビブラートが大事だよ」とアドバイスをくれた。そのアドバイス以降、ブルースや古い音楽の方にどんどん興味が進んで行き、18の頃にはチャーリー・クリスチャンやジャンゴに辿り着いていた。聴いてる音楽が中学生の頃とだいぶ変わってしまい、その頃にはレイブンさんのライブに足を運ぶことも無くなっていた。それでも不思議なものでひょんな所でレイブンさんと遭遇することもあった。さらに時間が経ち、僕が30も過ぎた時、CANのダモ鈴木さんからダモズネットワークのアメリカ西海岸ツアーをやるのでギターで来ないかと誘ってくれた。ダモさんは近年と違い、当時は固定のメンバーで活動をしていた。僕以外は全員アメリカ人のメンバー。英語もままならない僕はアメリカに行き、LAでダモさんに初めて会った。今まで会った事もない僕をいきなりメンバーとしてアメリカに呼び寄せるダモさんも凄かった。のちに何であの時声をかけてくれたのかと聞くと「感(CAN)」と一言。初めて会ったダモさんなのに長いこと二人で歓談した。日本のバンドの話にもなったがダモさんはほとんど知らなかった。しかし唯一知ってるバンドがあるという、それはなんと大谷レイブンさんのマリノというので僕はびっくりした。ダモさんとマリノは音楽的に関係なさそうなのにどうして知っているのか、と尋ねると80年代半ばにマリノがドイツへ録音にやってきた際、スタジオの人達から頼まれて通訳として立ちあってあげたことがあるのだという。それから数年後、僕はボアダムスやゼニゲバのギタリスト田畑満さんと同じくゼニゲバのドラマーだった藤掛正隆さんとトリオバンドを始めた。それにdipのヤマジさんが加わり、ダモさんと渋谷でライブをやることになった。そして、そのライブの客席にレイブンさんと、マリノのドラマーの板倉ジュンさんの姿を見つけた。何でもドラムの藤掛さんがレイブンさんとジュンさんの知り合いでたまたまライブを観に来たらしい。ダモさんもマリノのメンバーと久々に再会することになった。これがきっかけでその後、田畑+藤掛+僕、それにレイブンさんが加わり、ダモさんと一緒にUFOクラブでライブを行った。ダモさんや藤掛さんを介してまさか一緒に演奏することになるとは不思議だった。14才の頃にレイブンさんに「いつか一緒に演奏してください」と言った事がある。レイブンさんはニコッと笑った。そのこと自体、僕も頭のどこかに行ってしまっていたのに、縁というのは不思議な物だと感じた。その後、レイブンさんともまた一緒に演奏する機会もあり、お酒を飲むこともあった。ある時レイブンさんが「宮下くん、川田良って知ってる? 彼もいいギタリストなんだよ」と言った事があった。レイブンさんから川田さんの名前が出たのも意外だった。というのもレイブンさんと音楽的に関係なさそうだと思っていたので。でも僕もフールズの川田さんのギターは好きだった。レイブンさんはジャンル的なものを飛び越える自由な感性を持っていた。その頃僕は世界の民族音楽にハマっていて、それに伴い民俗学的なものにも興味が出て調べたりもしていたけれど、レイブンさんはそういう事にも詳しかった。縄文人と弥生人の耳垢の湿度の話で酒の席で盛り上がった事もあった。

訃報を聞き、1984年に第2期ジェフ・ベック・グループのメンバーたちと作ったレイブンさんのソロアルバムのタイトル曲「Raven Eyes」を聴いていた。このレコーディングの時の裏話をレイブンさんから聞かせてもらった事もあった。マックス・ミドルトンやクライブ・チャーマン、リチャード・ベイリーたちと作ったこのアルバム、今聴いても好きだ。
タイトル曲を僕のやり方で弾いてレイブンさんにたむけたい。

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