小箱

食について書かれている魯山人のエッセイを読んでいると「ふしぎなような話であるが、最高の美食はまったく味が分からぬ」という節があった。 

フグとか山菜について書いているから自分からすると高尚な感じがするけれど(でも面白い)、何だか味がわからないが異様に美味いというのは実体験で数回あり、その中でも群馬県前橋のたこ焼きは忘れられない。
今から17年ほど前、ドライブで訪れた前橋で偶然見つけた。前橋駅からほど近い、道路に面したお店。

車で前を通りかかった時に何かピンときて買ってみた。
当時500円位だったので少し高めの値段に感じた。
パッケージが小豆色の良い小箱で上品な感じがした。
箱を開けるとソースに鰹節が盛られた通常より小ぶりなたこ焼きが整然と並んでいる。たこ焼き自体が小さい分、数も通常の6個とか8個ではなく12個ほど入っていたと思う。箱も本体も随分変わってるな、と思いながらつまんでみると「・・?」。
以前にこの様なたこ焼きを食べた事があるか? いや、無い。もう一口運ぶ。

不思議な味。何個食べても不思議な味だが何故か異様に美味い。
ソースの甘い辛いくらいの判別はつくものだろうと思われるかもしれないが、これが何故かわからない。甘くも辛くもなく、ただ旨味が広がる。

しかし、こんな微妙な味のたこ焼きがあるものなんだろうか?
ひょっとしてお店の人が作り間違えたのではないか?とも思い始めた。

自宅に戻り1、2週間たってもこのたこ焼きが思い浮かぶのでもう一度前橋まで行くことにした。土地勘がないので少し探したがお店を見つけることができ、同じたこ焼きを買った。やはり同じ箱で同じ盛り付け。食べてみると前回と同じ不思議な味のたこ焼きだった。作り間違いではなかった。もう一度あのたこ焼きを食べてみたい。

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